の、無い話。第零夜

の、無い話。第零夜

 

世の中に、何かなかったら。そんな、どうしようもない話。

今ある、何かがない、そんな世界。

さぁ、ディストピアへの扉を開かん。

 

第零夜

 

「桜」のない世界

 

そこには、桜はなかった。

春を表す、桜がなかった。

桜がないのだから、散ることはなかった。

そう、同期の桜もなければ、特攻兵器の「桜花」もなかった。

桜にかこつけて、桜見物もない。

夜桜で、泥酔することもない。

もちろん、桜餅もない。

 

一つのものがなくなるだけで、世の中は変わる。

今この瞬間、生まれ行く物によって、何かが変わる。

今この瞬間、死に行く物によって、何かが変わる。

 

行きつく先は、ユートピアか、はたまた、ディストピアか。

毛布にくるまって寝るのも、あと少し。